第二期塾生最終レポート

鈴木聡子 宍戸和行 山本美穂子 杉浦佑子 福田剛


鈴木聡子

問題意識

 私は会社に入社以来のほとんどの業務が海外営業であることから日頃から英語を使って仕事をしており、また英文科出身ゆえに言語とは文化背景を知って初めて話せるものだという思いを持っているだけに、自ずと英語圏文化と日本語文化がいい意味で対峙する日常の中で自己主張の在り方に常々疑問を持っていました。つまり、お互いに常に主語「I」の主張をする英語と「相手話者」の主張に対して自分の考えはどうかという形で対話する日本語との違いを受容・理解しながら仕事をしています。個人という存在を重視するという価値観が日本人にはないと長く言われ、もっと自己主張をしなければならないと言われてきました。しかしやたら自己主張をすることは本当に正しいことなのか?日本人は本当に自己主張が苦手なのか?日本人の言動は世界で認められないことなのか?日本人の良さとは何なのか?せっかく日本人として生まれ育っているのだから日本の良さをしっかり認識して生きていくことが大切ではないかと考えています。

 

日本のこころはどう貢献できると考えるか

 私たちの今はやはり先人達から脈々と流れてきている何かが土台になっていること、その何か、が、日本のこころだと思うが、そのことを自啓共創塾で再認識を超える実践的な知識として学ぶことができた。日本人は自信が持てないわけではないとしてもその自信を前に伝えることがどうも苦手なのか?しかし、長い歴史の中で培われてきた思想、自然との共存、空間・視覚・聴力的な認知能力らは世界に誇るものであることをもっと広く日本人に認識してほしいとあらためて思った。今年(2022年)だけではないが、サッカーW杯での日本人観客の試合後のふるまい、選手たちが去ったあとのロッカールームのありよう、監督がピッチに深く礼をして去っていく姿、どれも世界から絶賛された日本人のこころの表れそのものだと思う。畳の部屋に布団を敷けば寝室、ちゃぶ台を置けば食事室という工夫。もったいない精神はSDGsが提唱される前から持っている考え方。今一度地球が長く存続し人々が平和を享受して生きていくために、日本のこころを多くの日本人が再認識、日本人一人ひとりがその言動によって世界の人々に伝えていくことが世界への貢献だと思う。

 

自分がこれから、または、将来取り組んでみたいこと

 私は企業人としての役割を終えたあとは、英語をとりこぼしてしまった大人たち、受験目的ではない子供たち、に英語は道具ではなくて文化背景を学んでこそ面白いということを伝えていく役割を担いたいと考えている。その中で英語との対比として日本語の文化背景も同時に伝えていき、国際社会に生きる自分たちが、日本のこころを理解することが大切だということをきちんと話せるようになっていきたいと考えている。

 


宍戸和行

(1)これから先どのような世の中にしたいか。そこに日本のこころはどう貢献できると考えるか。

・この先の世の中、個人が競争するばかりでなく、個人が助け合う世の中にしたい。助け合うといっても単に困っている人を助け合うという意味ではなく、それぞれの持つ特性やスキル、ノウハウを活かした助け合い。助け合うことで新たな価値が生まれたり、意味が生まれたりする、そんな発展的な助け合いの世の中にしたい。

・縄文の時代から江戸時代まで、日本的な社会性、自然の豊かさから持たされた我々にしかない完成を改めて理解することができた。この日本人の感性に誇りを持っているし、その感性が世界に通用するものだと考えられるようになった。GAFAMと呼ばれるビッグテックが世界を席巻しているなかで、この日本人の感性は世界に飲み込まれないように持ち続けていかなければならないものだと思う。

 

(2)そのために、自分がこれから、または、将来取り組んでみたいこと。

・自分がこれから取り組んでみたいことは、この日本的な感性の大切さを後輩たちに感じさせる育成をしていきたいのと、自分が人と人とを結びつける活動をしていきたいことの2つです。単純作業をしていれば、経済が成長する時代は終わりを迎え、個人の活動としても同じことが言える社会になった。一人一人が価値のあるものとして、認められるべき時代になり、一人一人が幅広くスキルを発揮できる社会になっていくと思う。そうした一人一人の価値を最大限発揮できて、人として活躍を感じられる社会にしていきたい。

・また、個人的には、AIが活躍する時代を見据えた「人」がやるべき仕事について、新たな時代の「人」の役割を考え続けていきたい。テクノロジーは人の生活を便利にしてくれると言われるが、テクノロジーに合わせて苦労する側面も持つ。ただ、人は自分の行動に意味を持つことを大切にし、その意味付けで人は動くと思う。そうした意味を考えることが日本人としての感性だと思うし、単なる合理主義ではない時代に、日本人として、共感を大切にした意味づけを大切にし、実践していきたい。


山本美穂子

「これからの自分について」

 

 まず心からの感謝を申し上げます。5月より本講座を受講することができましたこと、これからの自分がどうあるべきか悩んでおりました私にとってとても重要な学びと気づきの場を得ることができました。また討議と意見交換の時間を共にした受講生の皆様との出会いにも感謝でございます。

 

   「どのような世の中にしたいか」と「自分はどうなりたいのか」を今回の一連の学びのなかで相対化してかなり整理できたと実感しています。ともすれば「他責的」に「こんな世の中だったらいいのに」と思いがちだった自身の思考を、「自分」を起点とするよう意識づけるよう心がけるようになりました。自然に身につくまでにはしばらく時間がかかると思いますが、まずは型から入ってみることが私自身には向いている、ということも今回の学びの中で認識し、それについて自信がもてたことは非常にありがたいです。

 

 型から入ることの良さについてはいくつかの講義の中でお話しいただきましたが、その一方でデメリットとして「型を破れなくて停滞する」という一面も持っています。思想の歴史と過去の日本の歴史を学ぶことで「型破り」を許す、社会の寛容さが常に存在するよう、世の中を整えるのが大人の役目であると考えます。

 

 私自身は次世代リーダーというよりは既にリーダー的な立場にいますので、世の中を整える側に、今まさに立っており、その立場の責任を果たしていくべきだと思います。

 

「責任を果たす」というと悲壮感が漂いますので、あまり堅苦しく考えず、まずは自分の手に届く範囲で取り組めることを実施していきます。以下に取り組むことを宣言したいと思います。

1.家族と友人を大事にすること

2.自啓共創塾で知りえた古典や歴史について継続して学び続けること

3.(当たり前のことですが)まずは社会人として自身の業務に取り組み、組織に貢献する

4.傾聴と対話を基本としたコミュニケーション実践する。

これらに取り組むことで「軸をもつ」人間として成長し続けていきたいと思います。


杉浦佑子

 地球上の生きとし生けるものが幸福を感じ、世界が平和であるために、私たちは原点に戻る必要があるように感じている。民族性や環境の違いはあれど、人類全員が地球市民であるという視点で考えれば、自然と調和していた暮らしに立ち返ることはとても重要だと考える。本塾で、縄文時代や古神道の起源について学び、その考えが確信に変わった。

 

 フィリピン・カオハガン島に暮らし始めて9年目になるが、住めば住むほど、自然と共に生きるということの本当の意味が分かってきた。自然をうまく生かした暮らし方もそうだが、自然と共に生きることを深く知っているからこその人としてのあり方が、私は世界に大きなヒントを投げかけているように感じている。

 

 カオハガン島を訪れる方がときどき口にするのが、「懐かしい」という言葉だ。日本の最先端の企業を率いる経営者のグループが島に来て、世界の未来がここにある、とおっしゃっていたこともある。これまでの経済至上主義の中では、カオハガン島は最後尾にいるのかもしれないが、これまでの世界のあり方に限界が見えている今、自然と共にあるカオハガン島のあり方は、世界の最先端と言えるのかもしれない。

 

 私がカオハガン島で得た学びは挙げたらきりがないが、その中でも重要な意味を持つと考えているのが、「誰も取り残さない」という意識だ。本塾の学びの中で、日本のこころの根底にも、同じ意識があることが分かった。しかし、カオハガン島の人々は、この「誰も」の中に、自分が含まれているのだが、現代の日本人は、子どもたちの自己肯定感の低さに象徴されるように、自分が取り残されてしまっているのではないかと感じることがある。本塾の中で、利他主義の「利他」の中には、自分も含まれると学び、とても納得がいった。カオハガン島の人たちは、自然に生かされていることを深く理解し、自然への感謝、畏敬の念を持ちながら、経済的・物質的には豊かではなくても、今自分に「ある」ものに気づき、「足るを知る」生活を送っている。人生を豊かに生きるために必要なものはすでに自分の中にあると知っていて、満たされているからこそ、自分の周りにいる人が取り残されないようにと意識を配ることができるのだ。

 

 自然と調和したこころを土台に築き上げられてきた日本の精神を、改めて日本人一人ひとりが見直し、自分に思いやりを持ち、己のあり方を磨き、さらに他者に気を配ることが、地球上の生きとし生けるものの幸福、世界の平和に果たす役割はとても大きいだろう。

 

 私はカオハガン島で日本を中心とした世界の方をお迎えし、インタープリターの役割を果たしていきたい。日本人が、島で「懐かしい」と感じるのはなぜなのか?カオハガン島と同じ暮らしはできなくても、人やコミュニティのあり方、自然と調和した感覚、他者を思いやる心など、自分たちの日常に持ち帰ることができるヒントはきっとたくさんある。本塾での学びが、そんな「懐かしさ」を深掘りさせてくれた。同時に、島にはない「日本のこころ」も学んだ。まずは、私自身がもっと日本のこころについて学び、出逢う人々と話題にしていくこと、そして、島で育っている我が子たちに、日本のこころを伝えていくこと。自然と調和した暮らしを送る我が子たちが、日本のこころをどう理解し、どんな未来を創っていくのか、人々にどんな影響を与えていくのか、私の楽しみのひとつでもある。


福田剛

〇試みたいこと

・技術で遅れない。自分自身がAIを学び、職場のリスキングの先鞭をつける。AIで余暇を増やし多くの人がわが国の文化に親しみ文芸復興する下地をつくる。

・やまとことばの使用。和のリズムをつくる。

 

〇いろいろなものが混ざり合う日本の文化

・自啓共創塾の学びの中で神道、儒教、仏教などが混ざりあって一緒にあるというわが国の感覚は世界的には珍しいのではないかというのは一つの氣付きでした。そしてその起源は縄文時代にまで遡り、アニミズムや清らかなものへの感性は古神道に受け継がれて今に活きており、世界的に見れば比較的大らかな文化が育まれてきたことも学びました。

 

〇日本語で性格が丸くなる。やまとことばの使用。

・外国人の方の日本語が上達すると性格が温和になるという話は、特に印象に残りました。話題提供の外国人の先生の和歌の読み方や間の取り方は現代のせわしないトークと対極をなしており、やまとことばは和の基ではないかと思いました。十七条憲法の第一に和を貴ぶことが挙げられていることも、やまとことばが培った感性によるものと思います。

 

〇それでも戦争があった

・日本のこころの素晴らしさを学びながらも、昭和の戦争について、往時の人々は現代よりも日本のこころに通じていたかと思うのですが、なぜ敗戦を向かえる事態になったか氣にかかっています。今時点の私の見解として、一つは兵器製造に必要な重工業化の遅れによる焦り、もう一つは戦争遂行に向けた価値観の一本化ではないかと思います。

・産業の領域で世界に遅れをとること、焦りの裏返しで何かよりどころとなる価値観・標語に一丸となってはまりこむこと。これらは平和に対するリスクではないかと思います。

 

〇平和に少しでも貢献するために、次のことに取り組みたい

・AIは時代の潮流で今後ますます広がると見込まれます。AIは業務の自動化を進めることに役立ちますが、いかに学習させるかはそれぞれの状況によるところがあり、日頃直面している作業や課題に対して最も精通している人がAIにも精通することが活用の近道と考えます。自分自身で学ぶことが一番手近に着手できるため、やってみます。

・リスキングが言われる昨今ですが、単に技術に精通するのみではなく、余暇を作り出すことが重要と思います。効率化で週休3日制を実現すれば二泊三日の旅行ができる機会ができます。観光を呼びかける前提としてもAIを学び使いこなす意義があると考えます。

・技術だけでは社会が先細りになることも学びました。日本のこころ・文化の要はやまとことばであると思います。こちらも手近な所で家庭にて子どもに和歌や十七条憲法のよみきかせをします。古語のリズムで平和・温和な間を探求していきたいです。

・最後に考えすぎても窮屈ですので座禅します。無私となって利他の生き方をしたいです。

・以上です。先生方、運営の方々、塾生の皆さま、貴重な学びの時間をありがとうございました。