第二期塾生最終レポート

大橋真由美 池野昌宏 酒井宏忠 大久保慶一 徳田治子


大橋真由美

 今自分がいる場所から見える世界には、部分観の二元論ばかりが目に付く。部分観で解決することであればよいが、時はすでにそれでは解決しないことが山積しているようにも感じられる。目的がないわけではないが、枝葉末節にばかりが独り歩きしていて、情報を発する側も、情報を得る側も、共に『義務だ、権利だ』『損だ、得だ』は声高く意見を発すれども、それは常に偏っていて、本質的な部分を全体観で裏観・表観という見方でものを見、意見をいう人にお目にかかることは非常に少ないと感じている。今自身が携わっている仕事は人と法律制度に関わることであるため、法律的にどうなのか?制度的にどうなのか?を相談ごととして問われることも多いが、同様である。さらに現実問題として人の問題が法律や制度で解決できることは多くはない。法治国家なので法は守るべきものであることは当然に前提として持ってはいるが、そもそもその法律が何のためにできたのか、本来その目的とするところは何か?もっと言えば、法律以前に考える必要がある。より本質的な部分である徳治や礼治をもっと伝え、お一人お一人が自分の頭で考え、自分が何をする必要があるのかを選択していける力をつけることは、これからの時代とても必要とされると思う。その力を培うためにも、日本のこころ・リベラルアーツの学びは非常に重要であるように考えられる。

 

 それらを踏まえ、自身のできることは何なのかと考えた時、安維に法律や制度で本質を隠すような回答は控え、法律制度の説明と併せ、その問題の本質はどこにあるのか?を自分にも相手にも問い続けることと、いま相手に見えている世界の視点を変えて伝えたり、そこから自身も相手も何か気づきを得ていけるように、地道にやっていくことではないかと思う。その為には、今後も自身がリベラルアーツに触れ、学び続ける必要性をさらに感じている。そして、共に歩める仲間を増やせるようにしていきたい。


池野昌宏

今後の世界が求むる物を日本の心が遍くカバー → ビジネスで実装し世界を具体的に良くしていく

 

 時代の要請が物質的充足から精神的充足に変化してきており、ビジネスの役割も変化してきている。いままでビジネスは、経済合理性の追求により物質的貧困を失くすという使命を主に担ってきており、これにより世界は飛躍的に物質的に豊かになり、食うに困る人が激減した。今、格差拡大や地球環境、生物多様性といった問題が重大化し、またスローダウンする経済に加え、「限界利益0社会」のようなビジョンが湧出する中、ビジネスの新たな使命の定義が必要となっている。ビジネスにヒューマニティの回復/拡大という新たな役割を担わせて、人の本質である善性や相互依存性が発揮され、各人が自己実現を行えるような、精神的充足に満ちた次のステージの世界へと変革していく必要がある。

 

 生物の宿命として、「個体の保全」と「種の繁栄」と二つの命題の中でバランスを取りながら人は活動するが、今までの世界の主流の西洋的アプローチでは、自我の目覚めがまずあり、その欲求を満たすべく個の尊重といった形で理性と智は発展してきた。これは個の生存(食/物質の充足)が必須命題であったこれまでの時代の要請にもかなっていた。生存問題がかなり改善されてきた今、全体調和/種の繁栄がより大切になってきており、人類種としてのあり様や世界全体の舵取り、人のみならず他生命や地球環境も含めて、どう全体を存続させ良くしていくかに焦点を充てた意識の変化と行動が今求められる。極座標的からデカルト座標的な世界観への移行加速や、「我思う我と、我ありと認識する我は別」とサルトルが言うように自分をも含めて客観的にみる俯瞰の目で、自分と他者(人、生物、物)を同じ視点で認識し、全体を調和・発展させていくということが鍵となる。

 

 全体調和への道で重要なことは、①多様性尊重、②関係性重視、③理性と精神の統合智の3つ。いきなり全体調和のみで進むのでなく、個の尊重というOne Stepを入れたことで、人類種全体の持つ多様性が拡大し、これを認め合い統合していくやり方で、種全体としてのレジリエンスは上がっている。また、最新物理学が示唆する観測性・相関性・非局在化の問題があり、物体個々には実在・属性がなく、場に案在する粒子同士の干渉結果として物体は表出する。つまり関係性によってのみ実体を持つ。加えて、人はこれまで理性の力でこの世を理解し世界観を打ち立て進歩してきたが、昨今では理性が宿る意識領域ではカバーできない無意識領域の重要性が脚光を浴びている。NLPニューロロジカルレベルのピラミッド頂点の上側部分、ユング心理学の集合的無意識、仏教の阿頼耶識など。人の能力の70%を占める無意識部分を深く掘り、無意識・精神に関する探究と活用が益々重要となる。安易な蒙昧主義に負けることなく、理性と精神の両アプローチの統合を行い、結果として統合智の獲得・フル活用を行う。

 

 上記の重要3点を踏まえた全体調和へのシフトという大きな流れの中で、日本の心がこういう重要ファクターを遍く押さえている。縄文アミニズムから繋がる森羅万象への崇拝、八百万の神への多様性尊重、諸対立に関する包摂、和の精神、近代以降も京都学派における「内と外」の同一視、またこれらの世界観とも関係する利他の心や慈悲の心等々。「こんにちは」に表される他者に内在する太陽神への信仰・尊敬とそれに基づく全体世界観や、個々が持つ「清明心」という自我意識と行動規範(精神・理性・行動の統合智)が、日本の心の全体と個に関する特長を端的に物語っている。

 

 最後に大事なことは、我々は未来に向けてのこういう新たな考え方や意識変容の重要性と、それに関する日本の心の活用の利点を、単なるコンセプトに留まるのでなく、実社会や生活に実装していかねばならない。それも日本に閉じるのでなくグローバルに。この為、ビジネスという人間が創り出した最高の「価値創造・循環・拡大」システムにこのコンセプトをのせて、求めるべき姿やあり様をこの世で実際に具現化し広めていきたく思います。


酒井宏忠

 私が考えるこれからの日本の姿は、一言で言えば、強い倫理観と高い志を有する普通の市民の集合体です。普通の市民としたところが要諦で、一握りの富裕層が突出して知識を蓄え、いわゆるノブレスオブリージュを負う社会ではなく、日本中、どこに行って誰と会ってもその人が倫理と志を備えている、それが大事です。そのためには、日本社会のあちこちの様々な分野で人間を底上げする取り組みが求められると思われます。日本人が長らく培ってきた価値観や手法が役立ちます。例としては、二宮尊徳や弟子が体系化した、至誠、勤労、分度、推譲の四つの観点は、農業に限らず有効な場面が多い気がします。

 

 私自身、様々な分野のうちで一つ何を実践するか自分に問うた結果、勤務先の仕事から思い切って切り離し、趣味を発展させてみることにしました。来年から未来を担う子供たち向けのスポーツと心の教育の組み合わせとしてスキーを、またその機会を活用して日本が育んだ価値観を伝えられる場を持つようにします。勤務先の副業制度を使い、私でも迎えてくれるスキー場が見つかったのでスキーのインストラクターになります。技術を教える際に(ちなみに正式な資格がまだないため当初は手伝い)、スキーではゴンドラやリフト上で子供と話す時間が長いことを利用し、(少し無理矢理な感じもしますが、嫌がられない程度に…)日本の自然の豊かさや日本や世界の偉人たちの歴史を伝え、スキーと冬の厳しさから、心身の鍛錬の大事さなどを、伝えていきたいと思います。将来は、同志を募り資力や家庭的な限界のある子供にスキーを体験してもらえるような仕組みを作り、社会全体の底上げに一角から取り組もうと思つています。スキーはもともと資力に余裕のある人向けのスポーツとして発展してきました。そのままでは、社会を底上げする私の目論見とは真逆なため、新たな視点で考えを練っていきたいと考えます。一月に個人事務所の酒井事務所を設立し、そこを母体にして、当面は見た目は普通のフリーランスのインストラクターですが、将来に向けて志を持って一歩を踏み出すようにします。 

 


大久保慶一

1.目指すべき世の中/日本のこころの貢献:

 世界人口の増大に伴う資源獲得競争/戦争、自国ファースト/自利・利己主義に伴う貧富の差の拡大、便利さを追求した結果の地球環境悪化等、多くの危機が着実に増大している現代において、私たち子孫の時代がより厳しい時代になるとの危機感を覚えている。そのような現状を鑑み、全ての人類が安心して、安全に、豊かに/幸せに暮らせる世界を構築/次の世界につなげていきたいと考える。

 人類は有史以来、上記背景を基に食/安全/自国ファースト/自利・自己主義実現の為に争いを繰り返し、環境を破壊し続けているが、技術/科学の発展に伴い食/安全に関してはある程度の解決策を有しており(解決策はあるが、実行されない地域有)、残りは自国ファースト/自利・自己主義に起因するところが多いと感じる。その為、目指す世の中を実現する為に個々人の思想/価値観の教育が大切であると考える(小我を超えて大我/真我を希求し、世界・人類の全体最適を目指すこころの育成)。

 個々人の思想/価値観を教育するに当たり、『日本のこころ』から①自然に感謝し共に生きる日本的霊性、②他社を否定せず、良いところを取り入れる習合の精神、③自利・利己主義を戒め和を重んじる価値観等を広めていくことで、人類が次のステージに進化する手助けができると信じている。

 

2.これから、または、将来取り組んでみたいこと:

 先ずは自分自身が日本のこころをより深く理解する必要性を感じている為、古神道、仏教、日本の儒教、古典、文学等をしっかりと学びたいと考えている。その中で学んだことを先ずは家族、周りの方々と共有しながら更に理解を深め、将来的には学んだ内容を広く人種・世代関係なく広めていくことで、目指すべき世の中に近づくお手伝いをさせて頂きたいと考えている。


徳田治子

 2020年以降コロナのパンデミックにより、各国でデジタル化を加速し、中国はロックダウン、ロシアとウクライナの冷戦時代の影響により各国でエネルギーや食糧不足が勃発、欧米を中心に発展してきた資本主義経済が失速、と世界情勢がやや不安定になりつつある。

 

 こうした中で、100年、200年と永続的に地球で人々が安心して幸せに暮らせる社会の実現、すなわちサスティナブルな世界が、これまで以上に求められる。

 

 これから先求められるリーダーは、サスティナビリティな社会の実現に向けて世界各国が協力してそのサスティナブルな世界を実現できるよう、各国間を調整し、ゴールへ導く人であろう。

 

 そこに、日本のこころである自然中心主義の中、「和をもって尊しとなす」‘’中庸のリーダー‘’のあり方が貢献できると思う。

私は現在、日本企業の製造業の経営者や、幹部に向けてエグゼクティブコーチングや、リーダーシップ研修など支援する仕事をしている。今後は自啓共創塾の日本のこころの学びを活かし、日本発グローバルでリーダーシップを発揮できる未来の中庸のリーダーを育成する、研修やコーチングを企画し、取り組んでいきたいと思う。